ALTO BLOG
小説その3(後編)
もうなんか意味無く長くなったのでピザハットが冷めてしまったよ!
でも出来たけどあまり校正してないので朝ちょっと変更あるかもしれません。
※ありました。改定していますので2〜4時に見た人はすみません。
あったらここに書いておきますね。


鬼畜エロがすきな私がなんかこう普通ぽいのを頑張ってみたんですが
どうなんでしょうか。若いんで興味本位でしちゃってる感じがいいなあと。
あんまりエロくなくてすみません。そうしたんですけど物足りないかも。

一応なんか終わったあとで姫が色々言ってる終わったあとの風呂のシーンですが
ミハエルパートで小話を書く予定です。こっちはエロめで。
多分ミハエル視点のがエロいねん。姫は経験少ないので。


あと瞳のあたりの設定は過去の作品知らないと意味不明だと思うのでご説明。
ゼントラーディ人は交配では純血が作れない設定があるのです。単性生殖
なので。そこらへんの設定が好きなのでこの話にはこの後もちょっとそんな
話が出てくると思います。


ではどうぞ。↓※後編ですので前編を先に読んでね


「viola」Shironono Chiko


アルトSide(後編)




・・・・・・・・・・・・・・・・・・3








「水持ってくるから、そこで大人しくしてろよ〜」




 暗闇の脱衣所の中、少し離れた場所から声がする。俺は「ああ・・・」とだけ答えて冷たい壁に凭れ掛かり座った。



 あの後俺は無事脱衣所まで辿り着く事が出来た。男子としての大事なものは何か失った感もあるが、背に腹は変えられないとはこの事だと思う。
 広い脱衣所は簡易ロッカー、洗面台などが並んでいるが今の俺には全く見えない。消灯が済んだ空間に俺の目が慣れるのはまだ時間がかかるようだった。
 がさがさと何かを探る音の主はゼントラーディの血縁者。そのせいか視力は俺達の何倍もあり、暗闇もお手の物といった感じか。さっきも何も見えない洗い場を何事も無い様に進んで行き、俺をここまであっさりと運んできた。流石に眼鏡は外しているからってのもあるけれど、今更ながらにその能力に関心してしまう。


「…ったく、浴場は電源も遠隔操作かよ」

 暫くするとぺたぺたという足音と声が聞こえてきて、うっすらとミハエルの姿が見えてくる。何かを手に持っているようでじっと見ているとそれを俺の身体にふわり・・・と掛けてくれた。
 柔らかくて大きな…これはバスタオル?

「ほら、これを掛けて暫く休んでるといい。水は横に置いとくぞ?」

 そう言ってカタン、と俺の座っている床にペットボトルを置いてくれた。
 まだ新しいソレは今買ってくれたもののようだった…けれど、

「俺、バスタオルなんて持ってきてないけど・・・」
「それは俺のだ。風邪ひかれても困るし、正直…お姫様の裸体は目のやり場にも困るんでね」

 だから姫のタオルはこっちで使わせてもらうぜ?と、俺の持ってきたフェイスタオルをミハエルが代わりに使っているようだった。

 本人には失礼だがやけに優しくて…ちょっと気持ち悪い。
 たまに俺を姫扱いして馬鹿丁寧に扱う事はあるけれど、それはアイツなりの遊びっていうか…多分からかってるだけで。それなのに、普通にこんな事をされるとなんだか調子が狂ってしまう。
 ・・・・まあ、言ってるように裸の男がずっと座り込んでいるのが見てられないだけ、なのかもしれないけど。

 俺は身体を包む柔らかなバスタオルを胸元できゅうと握り締めた。
 冷たい床や壁のタイルは気持ち良いけれど、確かに素っ裸のまま休んでいるのも間抜けな光景だ。自分には見えない視界でも目の前の男には丸見えなんだし…。



「さっきは済まなかったな。俺が引きとめたせいで」

 上の方からミハエルの声がする。どうやら身体を拭き終わったようでそのまま俺のタオルは男の腰に巻かれていた。
 俺は下を向いたまま「いや、言わなかった俺も悪いし・・・」とだけ呟いた。別に出ようと思えばいつでも出られた訳だし、そもそもいい大人が風呂でのぼせるなんて情けない。
 しかもこんな風にミハエルに介抱されて…誰か人に見られていたら生きていけない所だった。さっきの事を思い出すだけで頬のあたりがますます熱くなってしまう。

「あまり具合が悪いようならカナリアさんの所に連れて行こうか?」
「大丈夫だ…落ち着いてきたから、暫くすれば動けるようになる」

 膝を抱えて、俺は火照る顔を隠すように俯いた。
 ミハエルは俺を見ているようで、少しだけその視線から逃れたくて。
 確かにまだ頭はぼうっとしているし、身体だって熱い。けれど別にこれはのぼせたからではないし…昔から俺は恥ずかしいとすぐ顔に出てしまうから、苦手なんだ…こういうのは。

「…変だな、ちょっと見せてみろ」

「別に大丈夫だから。むしろおかしいのは、お前…っ、ん」



 左頬にひやり、と冷たいものが触れた。
 その感触と温度差にびくりと身体が跳ねてしまう。
 冷たい指先は髪を絡ませながら、熱を確かめるように頬と耳に触れていく…滲んだ汗のせいで手が濡れてしまうのが気になったがそれもミハエルはかまわないようだった。


「やっぱり熱い、な」

 凄く、声が近い。
 思わず顔を上げるとミハエル・ブランの瞳が目の前にあった。

「お前、眼鏡・・・かけたのか」
「あまり見えすぎるのも、良くないんでね」

 俺の目の前で跪く男は、密かにそう言って微笑んだ。
 男の手は相変わらずそこに留まり、未だ俺の熱を奪っている。それが火照った頬に心地良くてまだ振り払えずにいる自分が嫌になった。

 ふと、ガラス越しのこんなに暗い場所でもはっきりと見える瞳の色が綺麗だと気付く。まるで小さい頃見せてもらったビイドロの玩具みたいな透き通るようなグリーン。こんな暗闇だからきっと気付いたのだと思った。
 反射する光もないのに、そこだけがやけに鮮やかで。
 俺達より多くのものを見通す瞳は、ヒトとの交配を繰り返しても衰える事は無いのだと…そしてヒトのそれとは全く違うのだと思わせた。


「なーに俺ばっか見てんだよ、ア・ル・ト・姫」


 はっと我に返るとミハエルがにやにやと俺を見ていた。
 どうやら俺はずっと目の前の男…いや、厳密に言うとその瞳を見ていたらしい。焦るように取り繕うけれどミハエルには逆効果らしくて、面白そうにそんな俺を観察していた。もしかして俺が思ってた事までアイツに見透かされてるとか…そんな事は無いと思うけど。

「…ま、まだ頭がはっきりしないだけだッ!」
「へえ…まあ俺はどっちでもイイけど?」

 いくら頭がぼーっとしてるとはいえ、こんな男を見て綺麗なんて思うとかどうかしてるんじゃないか?俺。
 しかも男に顔触られて気持ちいい、とか普通に考えても変だ。

「お前さ、やっぱ綺麗だけど可愛いよな」
「馬鹿にすんなッ!!」

 くすくすと笑いながら言われても説得力は全く無い。
 しかも綺麗も可愛いも男の俺が言われて嬉しいと思ってんのか?くそ…さっきまで思ってた事やっぱ全部撤回だ。
 頬を巡る指先も遊ぶように触れていて、もうそれも振り払ってやろうと思った。むしろこの状態で触らせておく自分がおかしいんだし…。

 でも、睨みつけた筈のその瞳はうっすらと細められて俺を見ていた。





「馬鹿にしてないぜ・・・本気でそう思ったの、今だしさ」

 アルト…そう呟くように続けるとミハエルは俺の耳元…いや、首筋辺りに鼻先を摺り寄せるように触れてきた。首元にかかる髪の中ですうっと男が息を吸い込むのが分かる。

 何だよ、コレ・・・。

『アルト・・・・』

 名前を呼ぶ声はいつかを思い出させるソレだった。
 ぞくぞくと、そのくすぐったいような感覚は背筋を走り、自然に吐息のようなものが唇から漏れるのを抑えるのに必死で。
 それでも息を少しずつ吸い込むと男のシャンプーの香りがして、どれだけ自分達が密着しているのかを思い知らされた。はあっ…と吐き出されるミハエルの息が耳元にかかり、俺は思わず唇を強く結ぶ。
 身体に羽織るバスタオル越しでも体温を感じる…壁に背を預けているせいで逃げることも叶わない。

「姫、可愛い…」
「や・・・…ん、っ」

 嫌だ、という言葉は唇を開くと吐息が混じって慌てて止めた。

 ミハエルはそれが不服なのかきゅうっと耳を柔らかく噛む。またそれで俺の身体は反応して身体に熱が溜まるのを感じた。閉じたままの膝が震えているのは多分それを抑えられないせい…自分でも何故こんな、男に身体が反応してしまうのか分からなくて泣きたくなった。
 それでも俺はそれに呑み込まれないようにと必死にミハエルを押し返そうとした。いくら力が入らなくても、少しでもそれで離れてくれるのならと…。男の手は今も俺の膝から下へ移動してきていて、このままだと隠してるソレがばれてしまうのは時間の問題だ。
 しかし俺の必死な状況とは裏腹に、耳元から聞こえてきたのはいつもの口調で。


「やっぱり、反応…するんだよなあ」
「・・・・・・え?」

 ミハエルはそう言ってあっさり俺の首元から顔を離すと、困ったような表情をしていた。

「何が・・・反応するんだよ、っ!!」

 はあはあと、息はまだ整わないままだったが俺は掠れた声で叫んだ。振り回されて、からかわれた挙句こんな表情をされた俺はどうしろって言うんだ。

「姫も随分デリカシーの無い質問をするんだな。そんなに俺のが見たいのか?」
「・・・・・っつ?!」

 ちらりと腰に巻いたタオルを捲ろうとする仕草に、俺は声にならない声を上げた。反応って…もしかしなくても俺の考えるソレなのか?!いや、でもそれじゃ何でお前までそんな事になるんだよ。
 思わず男の下半身に目が行きそうになってしまったけど、俺はそれを堪えた。そもそも俺に対してコイツが興奮するところなんて、見てもどうしていいのか分からない。

「いや、本当は我慢出来なかっただけだ。流石に清らかな身体の姫に無体を…とは思ってたんだが不可抗力でこんな状況になっちまうしな」

 俺もまだまだ若いな…なんて関心してる場合じゃないだろ。
 こんな場所で、男に覆いかぶさられてる状態の俺の事をちょっとでも考えてくれと思う。
 学園の噂では年上の女性…しかも高級外車やアクセサリーを身に纏う女性が好みだと言われている男。男性嗜好な奴では無い…と、思う、けど。

「まさかそんな事をしに…来た訳じゃないよな…?」
「ああ。俺がアルトに欲情するか確かめに来た」

 あっけらかんとさっきから言う台詞の意味を、コイツはちゃんと分かっているのだろうかと思う。
 俺に実は会いに来たと言ったり、優しくしたりその…反応するとか我慢出来ないとか欲情するとか。こんな風に、また頬を撫でたり、またそんな目で俺を見たり。
 …もう頭の中がおかしく、なる。
 身体だって、自分では理解出来ない位に熱くなってるのに。
 
「分かんないって顔してるね、アルト姫」
「当たり前だ。いつもお前は分からないけど…今日は本当におかしい」
「でも姫にも分かりやすいようにしたら、きっと失神しちゃうかもよ?」

 …気持ちよくて。
 囁くような言葉はぞくりと俺の身体を震わせた。
 眼鏡の向こうの瞳が細められて、ミハエルが俺を見ている。
 逃げられないと思ったのは動物的な本能なのか、ただ混乱しているだけなのか…それとも。
 

「・・・しても、いい?」
「何、を…」
「姫を…苛めても、」


 いい?


 苛めるって、お前が、俺を?
 多分そんな言葉を紡ぐ筈だった…と思う。
 だけどそれは近づく瞳に遮られ、そのまま俺は目の前の男に言葉ごと奪われたのだった。









 重ねたミハエルの身体はもう冷たくは無かった。
 さっきまで冷たい肌が心地良くて離せない筈だったのに…今はもうそんな言い訳は出来ないのだと思う。
 最初に触れたのは唇。その後、頬を両手で覆われると俺の身体は壁に押し付けられて完全に逃げ道を奪われた。
 …もうその後の俺はまるで唇から操られてる人形みたいで。

 ぴちゃぴちゃと空間に響く水音は重なった場所から鳴っている。それが自分達の唇からする音だと思うだけで泣きたくなった。
 苦しくて唇を離そうとするとミハエルに追われてもっと奥までソレが入ってくる。ずるずると俺の身体はそのまま床に押し倒されてもなお、息の荒い男に唇の中を犯されて。完全に覆いかぶさってきた男の背中に腕を回すとその熱さに驚いてしまった。
 唇が少しだけ離される時は俺の名前を呼ぶ時だけ。
 掠れた声は甘いような、それでいて苦しいようなトーンにも聞こえるのに…俺はまた合わされる唇に考えることを止められた。

 キス、なんてもちろん初めてだった。するのもされるのも。だからこれがキスなのかも本当は分からない。
 気持ちいい、苦しい、熱い。そんなのが全部身体の中に入ってきて、取り繕う暇も与えられなくて。


「ふう…っ、ん、ん…っ」

 でも、こんなのキスじゃなくて食べられてるだけじゃないかとも思う。

 さっきまで軽口を叩いていたそこは俺の呼吸の全てを奪って、さっきまで頬に触れていた手は俺の肌を擽るようにゆるゆると巡っていた。それがまた俺をどうしようもない程気持ちよくさせて、自然に深く重なる唇を強請るように絡めてしまう。
 ぎゅっと閉じた瞳からは生理的な涙が溢れて止まらない。
 

 膝を抱えて座っていた俺はいつの間にかバスタオルとミハエルと自分の髪の毛に絡まって、床でぐちゃぐちゃになっていた。
 最初は閉じたままだった膝も、もうだらしなくミハエルに開かされていて隠す事も出来ない。きっと俺の身体が興奮している事なんてとっくに伝わってる…こんな風に抱き寄せて必死に舌を絡めて「嫌だ」なんて説得力はゼロだって自分でも分かってるから。



「…アルト、アルト姫」

「ん・・・・」

 唇が離れていた事すらもう曖昧だった俺は、吐息のような声で答えるのが限界だった。ミハエルは今も内股の辺りを撫でていて俺を休ませてはくれなくて。

「今日は俺がするから、もう少し我慢して…」

 耳元にキスされながら囁かれた言葉は、ミハエルの手が俺の中心に触れた事で嫌でも理解させられる。
 さっきまで指先が触れるようで、絶対触れなかったソコはその刺激だけでも反応しているようだった。指先でゆるりと上から下へ巡っている場所は多分濡れてる所だと思う。俺が濡らした場所を指先でなぞりながら、こんなに濡れてる事をいけない事のように俺に教えてる。

「なん…っで、こんなこと…っ」
「終わったら言うよ。今言っても姫は気持ちよくて忘れちゃいそうだから」

 だからそのまま良い声で鳴いててよ…と、言った声はミハエルも興奮してる事を感じさせた。男の声なのにそれは艶めいてて自分の身体がおかしくなりそうな程。
 分かってやってるなら止めて欲しい。
 もうそんな手管なんて使わなくても我慢なんて出来ない。さっきから気持ちよくてもっとして欲しくて、壊れたように鳴くことしか出来ないのに。

「そこ、ばっかり…する、な…ぁ!」

 一旦触れてきた手はもう加減なんてなくて、俺を追い詰める事にしか興味が無いようだった。ちゅくちゅくと動かす手に合わせて響く音はまるで俺に聞かせるようにわざとたてられていて。漏らしてるみたいだ…と言われると恥ずかしさで死にそうになった。もうイってしまったみたいに濡れて、後ろまで流れてるのが自分でも分かるから。
 このままじゃ何を言ってしまうか分からなくて、もう一度背中にしがみ付いたけれどそれもミハエルを喜ばせるだけで悔しくなった。

「あんまりすると、イきそう?」
「やだ…あ、もう…動かしちゃ…」

 細いミハエルの指先は器用に先を刺激して、ぬるぬると一番俺が弱い所を触れてくる。溜まったものを吐き出したいのに、そんな事を他人…しかもこの男に見られたくなくて俺は何度も首を振った。自分の髪の毛がぱさぱさと乱れたけれどそんなのもう気にする事も出来なくて。
 人とする、こんな事が気持ちよくて苦しいなんて初めて知った。
 視界に入るミハエルの唇が動くたびに、キスしたくなる。
 アレを重ねるともっと気持ち良いって知って。

「も、もうダメだ、ミハ…エルっ…ひ、あっ…!」

「今日は意地悪しないよ。姫のご機嫌を損ねたくないから、ね」



 姫、存分に私の手で…と甘い声が響くと、もうその手は容赦が無かった。
 それまで散漫だった動きは上下に掻くようにして早められ、吐き出す喘ぎは熱い舌で絡めとられる。ようやく満たされた俺の唇はミハエルが求めるでもなく、俺のほうから深く交わって。
 唇の端から溢れるソレも首筋に辿り着く頃には愛撫のようなものになっていた。


「ミハ、エル…っ、あ、あ、あ…ッ!!」

 多分俺の感覚全部、今はこの男のもので。
 ミハエルの手の中を汚してしまうまで何を考えてたかなんて、誰にも言えない。
 



 俺はその間、本当にいやらしい事しか考えられなく、なっていたから。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・4









「姫が一人でする時は俺がするから、溜まった時は言えよ?」



 シャツを横で羽織った男は悪びれる訳でもなく、さらりとそんな言葉を吐いた。俺は用の済んだロッカーを閉めながら、そのロッカーを叩きそうになったのは言うまでも無い。
 1時間もここにいたせいか視界も随分と慣れてブロンドの髪も確認出来る程だ。今の俺の心境としてはむしろ今見えない方が良い…という感じなのだが。

「ふ…っざけんなッ!なんでお前にそんな事されなきゃいけないんだよ!」
「・・・・・・好きだから」

 絶句した、というのはまさにこういう時に使うものだと思った。

 好きだから。好きだから?
 色々な事は置いておいてもこの状況で言われて誰が「はい、そうですか」なんて言うと思うのか?!脱衣場であんな事をされて、しかも力の抜けた俺の身体をもう一度洗った挙句またあんなこと…っ!

「いいよ。姫がまだ好きじゃなくても今は触らせてくれるだけで…お前が嫌な奴を触らせないってのは分かってるし、それで十分だ」

「自惚れるなよ…ミハエル・ブラン」

 俺の恨めしそうな声も気にすることは無さそうな男は、鼻歌交じりで最後の身支度を整えているようで。

『・・・・早まったかもしれない』

 そう思う自分の考えは限りなく正解に近いと思う。

「あ、その顔…失敗したって思ってるだろ?でももう遅いんだってすぐ分かるさ」

 俺は着たばかりのシャツの胸元をぎゅうっと握り、上機嫌の男を睨み付けていた。まだ涙で真っ赤になった自分の瞳と顔では逆効果なんて知りもせず。

「アルト姫・・・」

 ふわり、と機嫌を取るように、囁くようにミハエルが近づいてくる。
 でもこんな場所でこうやってまた抱きしめられて、肘鉄でも一発食らわせて逃げ出さない俺が一番おかしいのは重々承知だ。
 何故逃げ出せないなんてのも今の自分にはまだ分からない。
 有言実行のこの男はそれを今から俺に教えるつもりなんだから、どうせ分かる時が来るのかもしれないし。今はこのままでも良いと思った。







「早く帰るぞ…っ!」


 俺は自分を未だ抱きしめたままの男を今度こそ引き離し、右手を強引に掴んでこの部屋を後にした。

 …馬鹿みたいに、にやけた顔の男を見ないようにして。
 

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